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昨日テキサスが震えたチキンマスターズも等身大な気がするぜ。チキンマスターズはスターだけどな。スターだけど等身大な気がするぜ。たぶんギターのわたべくんがバンドやってないやつはバンド楽しいからやんなよ!ギターは俺が教える、とかステージで言ってるからスゲーこの等身大感。テキサス等身大大好きだぜ
あとロックの国のロックンロールもあるよな
ロマンチックなやつ。ファンキーなやつ。
人口わずか15人で地平線が国境線って言って憚らない国の音楽のような等身大じゃないやつ。あとはベートーベンをぶん殴る感じのやつとか。テキサスそっちも大好きだ!バットマンのテーマとか、パオパオパーとか。受話器がくっついたフルフェイスのヘルメットをかぶって歌う人とか、エアギター大会に出たのにステージの上でカステラを切った人の心模様とか、等身大じゃないのも大好きだ!
お前のイカレタその白い靴があれば俺のギターはいらねえ!そうだ!等身大じゃないのも大好きだ!
こりゃあバトル、ユニッツ、ロイド!
バトルユニットロイズだ!!
コントラだ!
テキサスはすぐカテゴライズしたがるがそれはテキサスがカテゴライザーだからだぜ!
ライブ終わってカウカウと噂のカヘに行って噂のガパオたのんだ。カウカウはロコモコをたのんだ。自分のガパオ食べたあとカウカウのロコモコを半分くらい食べちったぜ混ぜ御飯最高だぜ。混ぜ御飯があれば御飯2杯はいけるぜ。カウカウをカウカウだと思っていたがカウカウは実はユカちゃんで、ユカちゃんはガパオを頼んでテキサスはそのガパオも半分くらい食べちったぜ。ガパオが1.5杯あれば白飯3杯はイケルぜ
昨日は紅布に行ってきたぜ。キャブレターズかっこよかったなあ。トリのチキンマスターズがクソかっこよかったなあ。震えたぜ
僕の中で夏休みとは8月からで、7月の夏休みなんかまだ休みじゃないんだ。
8月からが本夏休み。7月の休みなんかホントの休みに向けての準備期間だよ。
ウチにあった学研の宇宙の図鑑を眺めてるとき、銀河は銀河団の中でまわってるね、太陽系は銀河の中でまわってるね、地球は太陽の回りをまわってるね、地球自身もまわってるね、地球の上ではケエちゃんがよくまわってるね。宇宙の回転最小単位はケエちゃんなのかなあ。などと考えていた。
その夜僕は夢を見た。僕は快晴の下で海に漂よっていたところ激しい渦潮にでくわして救援に駆け付けたケエちゃんもろとも渦に巻き込まれ、海底に向かってグルグルと沈んでゆく。
不思議なことにもがきながらも空を見上げてみると、空はいつまでも爽快に青く、深く深く沈んでいっても太陽はいつまでも明るかったんだ。
どのくらい潮に揉まれながら落ちて行ったのか、いつのまにか渦の威力も弱まり僕らはやがて海底にソロリと着地した。海底に横たわっていた山吹色の砂がフワリと舞った。海の底を見渡すまでもなく、目の前にはいつも見慣れた富士山。僕の部屋の窓から見えるいつもの富士山。僕とケエちゃんはいつものようにふたりで登りはじめたんだ。
富士山は雲ひとつなく、いつにもましていい天気だったんだ。
コウイチ兄さんがうちに遊びにきたのはその夢から醒めた翌日だった。8月に入った最初の日。僕にとっての夏休み初日。
6コ上のコウイチ兄さんは僕の父かたの従兄弟で、今は東京でひとり暮し。食器メーカーでなんかの仕事をしてる。コウイチ兄さんがまだこの村に居たときは、僕の家のむかいに住んでいて、ひとりっ子のコウイチ兄さんは僕が生まれた時から僕を自分の弟のようにずっと可愛がってくれている。
僕にも兄弟はいなかったし、兄さんと僕はホントの兄弟のように育った。
僕が12才の時、兄さんは高校を卒業した18の歳に上京していった。コウイチ兄さんがこの村からいなくなった時はやはり寂しい思いもしたが、僕ももう中学に上級する年齢でもあったので単に寂しいというよりは普通の兄弟の弟が、門出の兄を見送る感覚と同じような気持ちだったと思う。
東京の生活のこと、職場のこと、東京の女の人の話、いろいろとメールとかで話を聞かせてくれるけど、コウイチ兄さんに会えるのは盆と正月の数日間だけになってしまった。夏の帰省の時期は毎年多少ズレるけど兄さんはだいたい8月の上旬に帰省して、僕の家にも一、二日泊まっていく。
僕の記憶の中の兄さんは、一年通して常にたくましく真っ黒に日焼けした顔をしてたけど、東京で一年暮らし、はじめて帰省し時には日焼けなんてすっかり落ちちゃってマッ白い顔していた。マッチロい顔してるくせに、東京土産片手に背広姿で父さんに挨拶なんかしてる姿を見てると、やっぱしなんとも頼もしくなったもんだと内心思った。
今年兄さんは僕へのお土産にギターを持って来てくれたんだ。
エレキギターじゃなくて、木の、やつだ。そのまま弾いて音が出るやつ。
僕が住んでる村なんてのはホントの山里だから、音楽とか楽器とか好きな奴は好きだけど、縁がない奴は生涯縁がない。
僕は今のとこ音楽に縁がないほうだ。よく聞くCDなんてちっちゃいころコウイチ兄さんがくれたビートルズベスト3って書いてあるCD一枚だけだ。
でもこのビートルズベストはよく聞いたな。そしてコウイチ兄さんとよく歌った。
今でもたまに聞きたくなって聞くけど、そのほかに僕が聞く音楽なんていったらテレビの音楽番組とかをなんとなく、歌手が歌ってる歌をなんとなく聞いてるだけだ。ギターを持ってきた兄さんにしたって音楽にはまっていたことなんてないはずで、僕の知っているコウイチ兄さんは永遠の野球少年で毎日毎日ひとりでも野球をしていて、そうじゃなかったら叶田川で釣をしていた。
東京でできた友達にギターを教わったらしい。兄さんは僕にギターをくれたのは、僕にギター弾くことを薦めたいのもあるけれど、どうやら自分の演奏を村の人、もっと言うと僕にその練習の成果を見せるためってのがギターを村にもってきた本当の理由のようだ。
兄さんはイルカのなごり雪とか、井上陽水の有名な曲とか、僕でも知ってるような曲を何曲か拙い手つきで演奏して、共に歌い、楽しかったし兄さんも満足そうだった。夜もふけてきたけどコウイチ兄さんも、僕もビール片手に何回も同じ曲を歌い続けた。たどたどしい伴奏に乗っけて、たどたどしく。
やがて僕はリクエストをしたんだ。
ビートルズのイエスタディを。兄さんはウーンとひとつ唸って頭を掻きながらビートルズはまだ練習してないんだって言ってから、ポロンと弦をつまびいて飲みかけの缶ビールを手にとった。
まさにその時
ギー ギー ギーギー!ギーギー!
ギー ギー ギー!!!
遠くのほうからけたたましい音が聞こえてきた!
なんだ!?どうした?異様な音に僕は即座に窓から半身を乗り出して辺りを見てみる。兄さんもギターを置いて僕のとなりに来てまわりを伺う。
あっちだ!富士山のほうだ!富士山のほうから聞こえる!
ギー ! ギー ギーギー!!
なんの音だろう?動物の鳴き声のようだが僕はいまだかつてこの窓の向こうからこんな音を聞いたことがない。兄さん、なんだろうこの音は?ふたりでただただ呆然と富士山を見上げ続ける。
ふと音がいっせいに鳴りやんだ。一瞬の静寂、虫の音、木々のざわめき、月明かり、いつもの僕の部屋の夜の音!
あ、と思う間を置いて次の瞬間、今までとは違う音が聞こえてきた。はっきりと!それは音ではなく音楽だった!富士山の上のほうから大音量で音楽が聞こえてきた。この曲、確かに聞き覚えがある、そうだ!間違いない!イエスタディじゃないか!イエスタディが聞こえてきた!
まわりの山や家々に反響しつつも音の出所ははっきりとわかる。イエスタディは噴火口から流れていた!!
イェイェイェイェスタディディディディ…
アイアイアイモントラボシンサファーラウェイウェイウェイ…
うーん、いい曲だなあ!素晴らしいや!
ふと隣をみると兄さんは驚愕した顔付きでワナワナと震えている。目をカッと見開き額に手を置いてなにかを思いだそうとしている。
「あっ!うなぎ落としだ!!」
コウイチ兄さん、うなぎ落としってなんだ!
…間違いない、今年はうなぎ落としの年なんだ…と、僕には意味のわからない言葉を発するやいなや、兄さんはそこから半回転の後、着座。ギターを手にとり必死に耳コピを開始した!はりさけんばかりにうたう僕!エアドラムをしながら歌う僕!!イエスタディ!イエスタディ!
富士山イエスタディ!富士山イエスタディ!
富士山イエスタディ!富士山イエスタディ!
イエスタディ富士山!イエスタディ富士山!
イエスタディ富士山!イエスタディ富士山!
富士山イエスタディさん!
富士山イエスタディさん!
僕の夏休みは始まったんだ。今、ケエちゃんも歌っているだろうかイエスタディを
渦潮に飲み込まれて歌っているというのだろうか、富士山と歌っているのだろうか
イエスタデイを!!
船が………。
http://black.ap.teacup.com/applet/thejetlazcinema/200608/archive?b=10
昔のことだけど
わすれちゃいけない
ひとことで言うのは難しいけど
俺達は昔の日本人を恥じてはいけない
考えなしに、日本は戦争で負けたんだからしかたないよっていっちゃダメだぜ
今日はライブだぜ!
〜さよなら虎ノ門〜
去年の冬、2月22日のまだ寒い頃から 頻繁に出入りしていた虎ノ門にある大カジマの現場が昨日終わった
引き渡しはまだみたいだがテキサス、マコッチ、シンスケッチ、ムッチのSテック・テキサス斑は撤退を決意した
俺達リペアラーズは一日で終わる仕事が多く、例えば一週間でも同じ仕事場に通うっつーことはあまりない。一ヶ月同じ現場をリペアーしっぱなしだとそりゃあもう大変な長さだ
虎ノ門の現場は連続で半年入ってたわけじゃなく、あったりなかったりの飛び石的に入ってた現場だがそれでも足掛け半年は異例の長丁場だよな
現場は大カジマがしきる地上41階建、販売最低価格3億円の高級マンション、作業員延べ人数30万人参加の「Tiger 4th Project」だ
こうまでデカイ現場だとスゲー堅苦しいもんでテキサスは閉塞感を打ち破るために10時休憩とか昼休みとかに現場から離れ外に出るんだ。誰もテキサスを縛ることはできねえぜ。例えそれが大カジマだろうがな!
外の新鮮な空気を吸うためにテキサスは「Tiger 4th Project」から5分程歩いたとこにあるオフィスビルの、なんか、そのビルが管理する中庭っつーか、ガ、ガーデンっつーか緑がたくさんあって噴水があり人造の小川がありベンチがあり花壇があるような場所をチョイスして休み時間にはそこに行って休憩してた
大使館や立派なオフィスビルがまわりにいっぱいあって、行き交い立ち止まり一服を決め込む奴らも上流だったがテキサスはブルーカラーとして胸をはって休憩したぜ
2月はさむいぜ。噴水を見るテキサスの感想はこんなビルの街でしかも寒いのになにが噴水だよ。ハッ!わざとらしい。そして寒々しいと、トリツクシマもなかったが、3月に入ると暖かい日が出て来たり、木がやる気を出すそぶりを見せたりする。中でもそこかしこに桜の木がたくさん植えられていているのを見たテキサスはいまや遅しと桜の開花を待ち望んでた。長い冬から飛び出した春はもう最高だ。今年のテキサスの桜の印章は虎ノ門の花でキまりだった。桜はなんて綺麗なんだろう
しばらくひとりで通ってた虎ノ門だったが4月だったか5月だったかにマコッチを現場に呼び、さらにシンスケッチを呼び労働の苦しみを共有した。しかし休憩場所のガーデンを通るオフィスガール達やレディ・ザ・セレバー達は薄着になってきた。そのうち彼女達はカーデガンも脱いだんだ!
春が過ぎて夏がきた
現場のテキサス斑は最後の最後に外注リペア・マスター‘黄金のコーボルト社’ザ・ムッチを投入し、労働の苦しみを共有した
ガーデンに集うオフィスガール、レディ・ザ・セレバーは今やもっぱらノースリーブだ。マブい夏がやってきたぜ
冬の間、噴水をあれだけ冷たい目で見てたテキサスも今となっちゃやっぱ水辺はいいなあと言っちゃう始末
ミンミン蝉がケタタマしいのもまた心地よい
虎ノ門にも夏が来たぜ
現場は最終段階に差し掛かり引き渡しまであと僅かとなった。もういいんじゃねえか
俺達はもういいんじゃねえか。俺達が手伝えることってここまでだよ。だって夏がきちまったからさ
休憩ガーデンに馬鹿でかいイチョウがそびえ立っている。樹齢何年だろう?ケントウがつかないがマッタク、高い、太い、でかい
そして下のほうの太い立派な枝から、なんか、なんなのかわかんないが、樹液みたいのが氷柱みたいに固まって垂れ下がりぶら下がってボローンってなってて、それは木の一部なんだが、そっから新しい枝が生えてたりするワケわかんないスゲー貫禄のイチョウだ
イチョウって太古の種なんだろ?もう億の昔からあるんだ。種として地上のはるか先輩だし
ここのイチョウもテキサスの大先輩だろう
圧倒されるよな。昼休みここにきてた時はいつも、イチョウにイチョウパワーをもらってたぜ
そしてこのイチョウは大カジマの「Tiger 4th Project」を始めから見守ってたんだろう
それどころか、はるか昔から虎ノ門の街を見ていたんだろう
ムッチとテキサスがガーデンのそのあたりで飯食ってた時、巡回中の警備員のおっさんが
「そんなとこで飯くってないで、あっちのベンチでくえばいいじゃん」
と話し掛けてきた
「イチョウが綺麗なんでここでいいです」
ってムッチが言ったんだ
いつからか俺達リペアラーズはイチョウを見上げてたんだ
おおむかしからここに立ってるイチョウ
見ると足元には若いイチョウの木が生えている
この虎ノ門の地から芽吹いた若木だ。こいつはテキサスの28年より後輩だろう
それを見てさ、テキサスもここいらで、虎ノ門もんから巣立っていく決心を固めたんだぜ
寒い日も春の日も、そして夏の日も俺達はここに来ていた。イチョウの下に座ってた
若木はもう自立してるんだ。だからもうテキサスも頼れねえよ。テキサスはイチョウの木から飛び立っていくよ
ホント言うとまだ仕事はたくさん残ってるんだけどな
だからシンスケッチは今日もまた行ってるんだけどな
ホントは「Tiger 4th Project」が嫌んなってテキサス逃げ出しただけだけどな
もういいや!出るぜ!虎の、門を、出るぜ!!
俺は頑張った!!
(つづく)